後見Q&A
A1 成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などで判断能力が低下している人のために援助してくれる人を家庭裁判所に選んでもらう制度です。
これにより自分一人では困難な不動産や預貯金等の財産の管理や各種契約が安全に行えるようになります。
A2 成年後見制度は大きく分けて法定後見と任意後見に分けられます。 法定後見では本人の判断能力の程度やその他の事情によって後見・保佐・補助の3つに分けられます。
任意後見については、後記Q6を参照ください。
A3 成年後見制度の申し立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長などに限られています。
A4 まず家庭裁判所から、後見事件の審判書が送付されてきます。その後しばらくすると、後見人ハンドブックというファイルが送付されてきます。この中に、いつまでに本人の財産について調査し、報告するかが書かれています。
財産の調査ですが、それぞれの調査対象に対して、審判書または登記事項証明書、自身の運転免許証等を提示し、成年後見人(保佐人・補助人)であることを証明することが不可欠です。
まず銀行の窓口で、ご本人の住所と名前で名寄せ(バラバラの物を整理しまとめること)をしてもらうと、その銀行にある財産を確認することができます。
不動産については、市町村の税務担当窓口で固定資産台帳を見せてもらうことで、ある程度までは把握できます。不動産が登記されている場合は法務局で確認することができます。
問題は現金や有価証券などです。ご本人やご家族と協力して探す必要があるでしょう。ご本人の財産が把握できたら財産目録を作成します。
次に、ご本人の収入と支出、つまり収支を把握する必要があります。収入については、行政窓口で所得証明を取り寄せることでほぼわかります。
さらに、ご本人が働いておられる場合でしたら源泉徴収票、年金を受給されておられる場合でしたら、基礎年金など国民年金の場合には行政の窓口、厚生年金などの被用者年金の場合には社会保険事務所や保険組合などの窓口で調べることができます。
年金は、偶数月の15日に定期的な入金があるので、預金通帳があれば把握が早くなります。
支出については、ご本人やご家族に聞いたり、領収証や請求書で調べたりできますが、口座からの自動引き落しの場合で、どこに支払われているかわからない場合には、銀行で教えてもらうことができます。
介護状態や心身の状態を確認し、身上監護の計画についても裁判所に報告します。時間が足りない場合には家庭裁判所の担当書記官に相談してください。
A5 家庭裁判所から選ばれた成年後見人は本人の財産を管理したり、契約などの法律行為を本人に代わって行います。
ただし、スーパーなどでの日用品の買い物や実際の介護は一般に成年後見人の職務ではありません。
なお、成年後見人はその仕事を家庭裁判所に報告しなければなりません。
A6 任意後見制度は本人がまだ判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった時のことを考えてあらかじめ代理人(任意後見人)を選んでおき、自分の療養看護や財産管理について代理権を与えることを、事前に契約によって決めておく制度のことです(必ず公正証書を作成します)。
そして、本人の判断能力が低下した時は、任意後見人は家庭裁判所が選んだ任意後見監督人のチェックのもと、本人に代わって財産を管理したり契約を締結したりして本人を支援します。
A7 浪費者は成年後見制度を利用することはできません。 以前の禁治産制度では浪費者も準禁治産者として保護されていました。
これは、禁治産制度が家制度の思想を背景にもち、もっぱら家産の維持という考え方に基づいていたからですが、成年後見制度では家制度の思想は排除されて個人主義の考えに基づくからです。
A8 以前の禁治産制度ではその旨が戸籍に載ってしまっていましたが、成年後見制度ではその旨が戸籍に載ることはありません。
その代わりに東京法務局に登記されて本人や成年後見人などから請求があれば登記事項証明書が発行されます。
A9 期間と費用はケースバイケースですが一般的には期間は3~6ヶ月、費用は切手、印紙代で5,000円~1万円です。ただし、鑑定を要する場合は別途、鑑定費用が5~15万円かかります。また、申し立てを司法書士に依頼すると別途、報酬がかかります。
A10 会社の取締役に就けなくなったり、弁護士や医者等の一定の資格に就けなくなるといった資格制限があります。
なお、成年後見制度を利用してもその旨が戸籍に記載されることはありません。
A11 成年後見制度の申し立てはそれほど難しいものではありませんので司法書士等の専門家に頼まなくてもできないことはありません。ただし、どの手続きを選択するべきかなど判断の難しい面もありますので、一度は専門家に相談してみるのがよいと思います。
A12 財産調査、身上調査などの調査をしっかり行い、定期の収入、定期の支出、負債等の経済状況を把握し、近いうちに多額の収入や出費が見込まれる場合は、それらを見越して予定を立てることです。
A13 口座取引の方法ですが、口座の名義を後見人の名義に変更する必要があります。 ただし、後見人個人の財産と混同することを避けるためにも名義は○○○○ △△△△ 印 (被後見人の名前) 成年後見人 (後見人の名前) (後見人の印鑑) と、するよう銀行等から指示されます。
これらの手続きのためには、登記事項証明書(または審判書)、後見人の運転免許証等身分のわかるもの、実印、印鑑証明書が必要です。また、従来のキャッシュカ-ドは使用できなくなります。
A14 後見人は受任者と同等の管理義務を負います。受任者は、有償、無償を問わず、職業、地位、能力、生活状況等から判断し、社会通念上の注意義務が課せられ、受任者は、自分自身に対する注意義務よりも、高度な注意義務が要求されるということが民法第644条に規定されています。
原則的には契約書どおりの履行と、社会通念上ご本人に損害を与えない程度の管理処分行為を行わなくてはなりません。
A15 迷ったときは裁判所と相談してください。それでも判断に迷う場合は、家庭裁判所の担当書記官に相談します。詳しくは後見人ハンドブックをご覧ください。
A16 居住用不動産の売却は裁判所の許可を得て行ってください。 なぜかというと、被後見人への生活の影響が大きく十分な配慮が求められるからです。 民法第859条の3には、成年後見人が、被後見人に代わって居住用の建物、敷地等を処分するには、家庭裁判所の許可を受けなければならない、と定められています。
A17 後見人(保佐人・補助人)の報酬は裁判所が決定するのですが、もともとご本人の暮らしを守るための制度ですから、裁判所がご本人の生活に大きな影響を与えるような報酬を決定することはありません。 報酬はご本人の財産から捻出することとなります。
A18 すでに任意後見契約を結んでいる方が、さらに法定後見制度を利用することはできません。任意後見契約による支援が優先されます。しかし、任意後見契約による支援内容では不十分でご本人の支援が行えない場合など、家庭裁判所がやむをえないと認めた場合には法定後見制度を利用することができます。
取消権が必要になった場合などがそれにあたるでしょう。法定後見制度による支援が始まると、任意後見契約は終了します。